キミが欲しい、とキスが言う
*
美咲ちゃんとはそこで別れ、私は仕事もあるので、そのまま【U TA GE】に向かった。
まだ早い時間だったから、夜の営業は始まってないだろう。
案の定、クローズの札がかかっている扉を、遠慮なく開く。
「こんにちは」
「ああ、茜さん、いらっしゃいませ。あいにく営業時間前なんですよ」
迎えてくれたのは数家くんだ。
「知ってる。ちょっとだけ休ませてよ」
「お疲れですか? 水しか出ませんよ」
「いいわよ」
数家くんは掃除をしていたようだ。モップを持ったまま、厨房に声をかける。
「すいません、俺、手が汚れてるんで、誰かお冷持ってきてください」
「……はい、お待ち」
しばらくして、水を持って出てきたのは馬場くんだ。私を見つけて、目を丸くする。
「あれ、茜さん?」
「あら、馬場くん」
「え? いつもより早くない。なんで?」
「休憩させてもらおうと思って。ちょっと、外で用事があったもんだから。家に帰るのも面倒で」
「なんだ。びっくりした」
水の入ったグラスをテーブルに置いた後、彼は自然に私の向かいの席に座る。邪魔しに来ておいてなんだけど、仕込みはいいのかしら。
美咲ちゃんとはそこで別れ、私は仕事もあるので、そのまま【U TA GE】に向かった。
まだ早い時間だったから、夜の営業は始まってないだろう。
案の定、クローズの札がかかっている扉を、遠慮なく開く。
「こんにちは」
「ああ、茜さん、いらっしゃいませ。あいにく営業時間前なんですよ」
迎えてくれたのは数家くんだ。
「知ってる。ちょっとだけ休ませてよ」
「お疲れですか? 水しか出ませんよ」
「いいわよ」
数家くんは掃除をしていたようだ。モップを持ったまま、厨房に声をかける。
「すいません、俺、手が汚れてるんで、誰かお冷持ってきてください」
「……はい、お待ち」
しばらくして、水を持って出てきたのは馬場くんだ。私を見つけて、目を丸くする。
「あれ、茜さん?」
「あら、馬場くん」
「え? いつもより早くない。なんで?」
「休憩させてもらおうと思って。ちょっと、外で用事があったもんだから。家に帰るのも面倒で」
「なんだ。びっくりした」
水の入ったグラスをテーブルに置いた後、彼は自然に私の向かいの席に座る。邪魔しに来ておいてなんだけど、仕込みはいいのかしら。