先生は私の旦那様
稀美果はバスタブにつかり一人涙を流していた。


「どうして涙が流れるの…悲しくなんか無いのにどうして……」


稀美果はお風呂を出ると今夜も直寿に声を掛けること無くベットへ入った。


暫くして直寿が寝室に入って来た。


「稀美果？もう寝たか？」


稀美果は返事をせずに瞼を閉じていた。
すると直寿は昨日と同じ様に頭を撫でてくれる。
そして『ごめんな』と呟いた。


どうして…
どうしてそんな言葉を掛けるの？　
偽善者なんだからそんな言葉掛けないで！………



朝起きるとやはり今日も直寿が寝室で寝た様子は無かった。
ドレッサーに向かうと鏡には目の腫れた酷い顔の稀美果が映っていた。


「ぅわーどうしよう？こんなに目が腫れてる。」


稀美果は昨夜遅くまで声を押し殺して枕を濡らしていた。
なぜ涙が流れるのか分からず、ずっと泣き疲れるまで泣いてそのまま眠りについた。


確か前に碧と一緒に買った伊達メガネがあったはず。


稀美果はドレッサーの引き出しを開け探す。


「あった！」


少しメイクをしてフレームの太い黒縁メガネを掛ける。


「うん、これなら目立たないでしょう？」



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