先生は私の旦那様
円城寺家の主治医に来てもらい直寿を診てもらった。
直寿はもう少しで肺炎を起こすところだったそうだ。


「…きみ…か…」


直寿は熱でうなされ稀美果の名前を呼び続けていた。
稀美果もまた、直寿の傍らで手を握り
『ごめんね…直寿ごめんね…』とずっと謝って居た。


「お嬢様? 私が付いておりますので少しお休みになって下さい」


八重さんは稀美果の体が心配で何度か声を掛けるのだが稀美果は直寿の側を離れようとはしなかった。


「八重さんありがとう。…でも直寿の側に居たいの……居させて…」


直寿は高熱が続き、2日間一度も目を覚まさなかった。
その間、稀美果は学校を休み食事もまともに摂らずにずっと直寿に付き添っていた。

日付が土曜日へと変わった真夜中、稀美果は直寿が眠るベットの傍らで頭を伏せるように眠っていた。


誰かが優しい手で私の頭を撫でてくれてる……
誰が?誰が撫でてくれてるの?
ううん…私はこの手を知ってる。
私はこの手が大好き……
直寿が好き……


稀美果が目を覚ますと直寿は眼を覚ましていたようで稀美果の頭を撫でてくれていた。


「あっ、直寿気が付いたの? 良かった……」


稀美果はほっと安堵の表情を見せ直寿の額に手を当てる。


「熱は下がったみたいだね?」


「稀美果、ずっと付いていてくれたのか?」


「だって直寿が倒れたのは私のせいだもの…… ごめんね…」


「いや、稀美果のせいじゃない。俺が稀美果の気持ちを考えなかったからだ… 稀美果が俺との結婚を嫌がって居たのに無理に話を進めた俺が悪いんだ。すまない…」


「直寿…」 違う…違うの…


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