先生は私の旦那様
「稀美果? …結婚の話はなかった事にしよう。学園の事はもう心配要らない。銀行とも話は着いた。俺の親父が保証人になってくれたから銀行も融資してくれる事になった。経営方針も少し見直せば問題なく解決できる。随分時間が掛かったが悪かったな? これで稀美果は自由だよ。」


直寿の瞳は悲しそうな…苦しそうな…私には彼が喪失感を持っている様に見える。私の気のせいだろうか……


直寿は起き上がりベットを出ると寝室を出ようとした。


「どこいくの?」


「俺は書斎で寝る。稀美果のベットを取って悪かったなゆっくり休んでくれ。」と微笑んだ。


でも、その微笑みはとても苦しそうに見えた。


どうして… どうして今になってそんなこと言うの?
私の気持ちを奪っておいて…今更そんなこと言わないでよ!学園?… 銀行?… 融資?… そんなものもうどうでも良い。
私は… 私は直寿と一緒に居たい。


「やだ……」


「え?」


「やだよ! 私達まだ夫婦でしょ? 直寿言ったじゃない! 夫婦だからベットは1つで良いんだって! だったらここで一緒に寝れば良いじゃない! 一緒に寝てよ!! 私……こんな大きなベットでひとりなんて寂しすぎるでしょ!!」


「稀美果?…」


稀美果は直寿に駆け寄り抱きついた。


「行かないで……ひとりにしないで……好きなの…直寿が好きなの……だから私の側にいてよ!」


泣きながら稀美果は直寿に素直な気持ちをぶつけた。
直寿も稀美果を抱きしめ


「稀美果。俺も稀美果が好きだ!」


そして直寿の唇が稀美果の唇へ落ちてきた。
稀美果のファーストキスは直寿のものとなった。

その後大きなベットで二人は手を繋ぎ朝までぐっすり眠った。



朝、目を覚ますと隣には直寿が居た。
綺麗な顔の直寿に優しい眼差しを向けられ恥ずかしくなる。


「稀美果、おはよう。」


「ぉ…ょぅ」


稀美果は昨夜自分の言ったことを思い出し恥ずかしくなった。


「稀美果、顔が赤いぞ!」


だって恥ずかしいんだもん……
自分から好きだなんて告白したの初めてだったし、ましてや抱きつくなんて…
それにファーストキスしたんだもん……
恥ずかしくて顔も赤くなるよ。


直寿は稀美果の額に手を当てる。


ん?なに?


「おまえ熱あるじゃないか!」


え?熱?そぅいえばなんだかボーとするような…


直寿は慌てて口に手を当て『移すなよ!』と言うと寝室を出て行った。


嘘!?…


「なにあれ? 信じられない!! 直寿のバカ!」


稀美果は直寿の出ていったドアに枕を投げつけた。
稀美果は熱が上がってきたようでいつのまにか意識を手放してしまった。




< 23 / 119 >

この作品をシェア

pagetop