先生は私の旦那様
稀美果は何も言えず俯いていると頭上で


「何やってるんだ！！」と怒気を含んだ直寿の声が聞こえた。


稀美果は肩をビクッと震わせ顔を上げると、自分に向けられた言葉だと思った言葉は野田優香に向けられたものだった。
そして直寿の顔は見た事の無い恐ろしい鬼のような形相していた。だが野田優香は気にもならない様で『直寿座ったら？』と微笑んで見せる。
周りのお客さんは何事かと直寿を見ている。


『直寿……』稀美果に呼ばれ直寿は仕方なく稀美果の隣に座った。


「優香、どういうつもりだ？！稀美果に何を言った？！」


直寿は稀美果を見て何かあったと悟ったようだ。
直寿は声のトーンは落としているが怒気を含んでいる事は変わらない。


「私達の為に政略結婚はやめて頂戴ってお願いしていたのよ」


野田優香は『私達の為』を強調して当然かの様に言う。


「だから何度も言ってるように俺達は政略結婚ではない！ それにお前にとやかく言われる筋合いじゃない！ 二度と俺達に関わるな！！」

「そんなこと言っていいのかしら？ 私がパパに頼んだら星蘭華学園は大変な事になるんじゃないかしら？」と野田優香冷たく笑う。


え？星蘭華学園が大変な事ってどういう事？……


稀美果は野田優香が何を言っているのか分からず困惑する。
しかし直寿も黙っているつもりは無い様でひとつ溜息をついてから話しだす。


「あぁパパに頼みたきゃ頼むがいい！ 星蘭華学園に何かしてみろ、櫻瞳華学園だけでは無く黒木家全てに置いてお前の大好きなパパの務めている銀行から手を引く！ 大口の顧客を逃したら部長程度の役所なら首が飛ぶんじゃないか？ 何せうちの爺さんは頭取とは古くからの知り合いだからな！？ 分かったらさっさと消えろ！ 目障りだ！！」


野田優香は唇を噛み悔しそうに帰って行った。


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