先生は私の旦那様
「野田優香。あの人なんなのよ! 直寿のなんなのよ! ちゃんと話してよね! 私が納得出来るように話して!! じゃないとこのまま直寿と夫婦なんて出来ない……」


稀美果は一気にまくし立てると溢れ出る涙を構わす直寿を睨む。


「稀美果…ごめんな……」


直寿は稀美果の手を取ると引き寄せ隣に座らせ稀美果の頬を伝う涙を親指の腹で優しく拭った。


直寿は辛そうな顔をして「ちゃんと話すよ…」と話しだした。


「大学時代、自分で言うのも何だがそれなりにモテたんだ…だから女には苦労はしなかった。来るもの拒まずって言うか……野田優香もそのうちの一人だ。でも本気になる事は無かった。誰一人として……軽蔑するよな…出来たらこんな話稀美果には聞かせたくなかった。」

稀美果は何も言わずに黙って聞いていた。

「俺達が初めて会ったのは去年のパーティーじゃ無いんだよ。稀美果は忘れているけどその2年前に会ってるんだ。あの時も稀美果はつまらなさそうに会場の隅で1人座っていた。綺麗な子だなって思って声を掛けてオレンジジュースを差し出したら『お酒飲ませて悪戯でもする気ですか?』って冷たい視線を向けてきた。今までそんな目で見られた事も言われた事もなかったからホント驚いたよ。その後ホテルのボーイに頼んで持って来て貰ったジュースを安心して受け取った時に見せた笑顔がとても可愛くてね」

直寿はその時を思い出しているのか頬を緩める。

「その後も少し話したんだよ他愛もない話だったけど…俺が親父に呼ばれて立ち上がったら稀美果は寂しそうな顔をしたから『また今度ね』て稀美果の頭をポンポンて軽く叩いたら稀美果は『はい、また!』って笑顔を見せてくれた」

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