先生は私の旦那様
「無理!無理だって!」

「ついさっき『絶叫系以外なら何でもいいぞ!』って言ったじゃない!」

「そりゃー言ったけど…勘弁してくれよ……」

「ダーメ!早く!」


直寿が稀美果に引きずられるように連れて来られたのはメリーゴーランドで小さな子供達が列を作ってる中にふたりで並んでいる。


「なぁ稀美果、大人は俺達だけたぞ?辞めないか?」

と眉を下げ困った顔をして直寿は小さな声で言う。


稀美果は何か思いついた様でニヤっと悪い笑みを浮かべる。そして…

「気にするな!何処の誰だか分からないんだし、こんな事は地元じゃ出来ないんだから!」

稀美果はさっき直寿に言われた事をそのまま直寿に返して笑う。


直寿は項垂れていたかと思うと

「稀美果がそう言うなら見てろよ!」と呟いた。


え? なに? なんか余裕と言うか悪い顔になったみたいだけど… なんだか恐怖を感じるけど……


それから間もなく係の人が「おまたせしました」とゲートを開けた。


さっき迄恥ずかしがっていた直寿が前に並んで居た子供達を追い抜き係の人の静止を聞かずに前に出て先に白い大きな馬の元へ急いで行く。
そして…


「稀美果、こっちこっち」と手を上げ大きな声で呼ぶ。


ちょっと辞めてよ恥ずかしい… 他人のふりをしよう。


直寿と目を合わせない様にして稀美果は少し離れた馬車に乗ろうとした。
しかし、直寿は再び大きな声で

「稀美果、こっちだって!」と呼ばれてしまう。


稀美果は大きな溜息を吐き直寿の元へ行くと直寿は

「ほらっ!」と抱き上げられ稀美果が抵抗する間もなく馬に乗せられた。

稀美果はスカートをはいていたので馬に横座りの状態になった。そして直寿も一緒に馬にまたがったのだ。
まるで童話に出て来る王子様とお姫様が一緒に白馬に乗って居るように。

するとメリーゴーランドに乗る自分の子供を見ていた親達からクスクスと笑いが聞こえてきて、隣の馬に乗っていた女の子からは「良いなーお姫様みたい」と言われてしまった。


「ちょっと直寿何してるのよ!? 恥ずかしい! 降りてよ! 係の人に怒られるって!」


「気にするな! 何処の誰だか分からないんだし、こんな事は地元じゃ出来ないんだから!」と直寿は片方の口角を上げた。


やられた……


そこへベルトの確認に回っていた係のお姉さんに

「お客様危険ですのでお一人づつでお乗り下さい。」と注意された。


ほらね!直寿のバーカ……


すると直寿は…

「すいません。この娘1人では怖いって言うので大目に見てくれませんか? お願いします。」とイケメンの武器キラキラ笑顔をお姉さんに向けた。


だっ誰が1人で怖いと言いました?……

稀美果は口を開けて唖然としている。


係のお姉さんは顔を真っ赤にして

「はい…気を付けてくださいね」と言って離れていった。


ちょっ…ちょっとお姉さん!
『気を付けてくださいね』じゃない!って!! ダメなものはダメ!って言わないと……


それから直にメリーゴーランドは動き出したが稀美果は恥ずかしくてずっとメリーゴーランドが止まるまで俯いていた。


あぁ…これはなんの罰なんでしょう?……




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