先生は私の旦那様
授業も終わり皆んな下校していく。



「稀美果、頑張ってね!」と碧も帰って行く。



稀美果が「碧のひとでなし!」と言ったがもう碧の姿は無い。



仕方が無い…



稀美果はひとつため息を付いて掃除を始める。



掃除を初めて間もなく波瀬川尚樹が顔を出した。



「よっ!稀美果、仕方ないから俺が手伝ってやるよ!」と波瀬川尚樹は椅子を机の上に上げだした。



「波瀬川君ありがとう。でも良いよ!ひとりでやるから黒木先生に見つかったら怒られるし、テスト勉強あるでしょ?早く帰ったほうがいいよ!」



そう早く帰って!

こんなところ見られたら機嫌が悪くなる。

お願い!帰って!…



「ひとりでやるより二人のほうが早く終わるだろ?さっさと終わらせようぜ!」



そりゃー二人のほうが早いだろうけど…



ガラガラと扉の開く音そして…



「なんで波瀬川が居るんだ?」



やばい… 稀美果は固まってしまった。



稀美果の背後から聞こえてきた低い声。



振り返らなくても分かる直寿だ…

絶対に直寿は怒っている。

どうしよう…



稀美果は恐る恐る振り返る。


ぅわーやっぱり怒ってる…

直寿の右眉が上がってる…



「えーとですね…私がひとりで掃除しているのを見かねてですね…波瀬川君が手伝ってくれていた訳で…それでですね…」



あーもうどうしよう…



「先生、俺が勝手に手伝ってるんですよ!稀美果は悪くないんで!」



波瀬川君、それ以上何も言わないで!…

直寿の眉がピクピクしてる…



「へーそうか、じゃー二人で頑張ってやってくれ!だがひとりでって話だったんだからふたりなら2週間だな!!波瀬川も頼むな!藤田先生にも俺の方から言っておくよ!」



「あっ黒木先生!俺、帰ります!だから藤田、いや藤田先生には言わないで!」「稀美果、ごめん!俺、藤田の数学赤点続きなんだ!また赤点だとまずいから帰るわ!」



「あっありがとう。ごめんね」



波瀬川尚樹は「じゃーな」と稀美果の肩をポン叩いて慌てて帰って行った。








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