先生は私の旦那様
放送時間も終わり稀美果が教室へ戻る廊下は大変な事になっていた。

稀美果が廊下を通ると次々に声がかけられる。


「キャー先輩!愛の告白凄いです!」「円成寺先輩頑張って下さい!」「円成寺さんやるじゃん!」「稀美果びっくりしちゃった応援するよ!」 


元々、稀美果が学園長の孫だという事や成績が常に学年トップという事で稀美果の事を知らない人は居ない。

お嬢様だという事や頭の良さを鼻にかけず、気さくで誰に対しても変わらない稀美果を生徒のみならず教師も好意を持ってくれている。

皆んなが好意を持ってくれてる事は勿論嬉しかった。

だが、この時ばかりは自分の知名度を恨めしく思った。

告白めいたあの放送事故だから皆んなの注目を浴びるのは仕方ない。

ただ好奇な眼ばかりでは無かったそれだけが救いだった。



稀美果は「告白なんかじゃないから」と苦笑して自分の教室へ急ぎ足で戻った。



稀美果が教室に戻るとやはりクラスメートからも同じ様に声が掛かる。



違うからと言っても皆んなは、「頑張りなよ」「相手は誰?応援するからね」と好意の言葉が投げ掛けられる。



稀美果が自分の席に着き大きな溜息をつくと今度は碧から質問の嵐が襲う。



「稀美果はどういう事?私には黙ってる酷いじゃん!相手は誰なの?卵焼きが好きな人って誰よ?まっまさか尚樹なの?嘘でしょ?」



どうして波瀬川君が出てくるのよ…

そりゃー波瀬川君も、私の卵焼き好きだって言ってくれてるけど…

波瀬川君には悪いけど有り得ない…



「………」



稀美果はなんと言ったら碧が納得してくれるか、ただそれを考えていた。



「黙ってるって事は本当なの?だから昨日尚樹にお弁当作って来たの?」







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