先生は私の旦那様
翌日、稀美果はいつもより早く登校し、朝練に来る波瀬川尚樹を待っていたが来なかった。

波瀬川尚樹とはクラスも違うし、早く話をしたくても放課の短い時間では話せる内容では無い。

昼放課に話をするつもりでいるが稀美果はお昼の時間まで落ち着かなかった。

午前中の授業が終ると天気の良い日はいつものお気に入りの屋上でお昼を食べるが、今日ばかりは碧に大事な話が有るからお昼は別の場所でと言って一緒に波瀬川尚樹のクラスへ向かった。

1組のクラスへ行くと波瀬川尚樹は元気が無いようでがっくりと肩を落とし席に付いていた。



稀美果が教室の入り口から「波瀬川君」と声を掛けるが波瀬川尚樹は無反応だった。



すると「波瀬川、大好きな彼女が呼んでるぞ!」と男子から冷やかしの声が掛かる。

それに対して波瀬川尚樹が「うるせー!」と一喝する。



稀美果は波瀬川尚樹の元まで行き声を掛ける。



「波瀬川君ちょっと良いかなる? お弁当作って来たから一緒に食べよう?」



稀美果が声を掛けるが返事は無くただ首を振るだけで稀美果を見ようとはしなかった。



すると碧は何かを感じ取ったようで

「尚樹!何いじけてんのよ! 行くよ!」

と、波瀬川尚樹の制服のネクタイを引っ張り無理やり連れて行く。



「おい、やめろ!」 



「煩い!黙ってついて来い!」



波瀬川尚樹が抗議をしても碧は聞き入れる様子はない。



稀美果の後を碧は波瀬川のネクタイを引っ張りながらついて行く。



「稀美果何処まで行くの?」



稀美果は「ごめん…他の人に聞かれたくないから…」と学園長室の扉を開ける。




学園長には昨日の時点で稀美果が話をしお昼の時間部屋を借りたいとお願いしてあったのである。


部屋に入ると碧は「初めて入ったなー」と部屋を見渡している。



特に大した物が有るわけではない。



大きな机と椅子に、応接セット、それから色々な本が沢山並んだ書棚、大して目を引くような物はない



唯一目を引くと言ったら祖母のお気に入りの壁に掛かっている絵画。






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