先生は私の旦那様
直寿は食事をする時『いただきます』『ごちそうさま』と挨拶は必ずしてくれる。

私が忘れかけていた感謝の気持ちを、出会った頃の直寿は思い出させてくれた。

私が高校に入った頃から両親は仕事が忙しくなりひとりで食事をする事が多くなり、いつの間にか『いただきます』も『ごちそうさま』も感謝の言葉を言わなくなっていた。

食材を作ってくれてる人や料理を作ってくれた人に感謝する大切な言葉。



「「ごちそうさま。」」



この言葉を合図に直寿は食器をキッチンへ運ぶ為立ち上がる。

いつも食事が終わると後片付けを手伝ってくれる直寿。

だけど今日は直寿の手から食器を奪い取る。



「直寿。まだ仕事するんでしょう?後は良いから早く仕事終わらせて寝て。また明日早いんでしょ?」

「稀美果、有難う。でも大丈夫だよ。仕事は区切りも付いたから明日からは向こうに行かないよ。」



「そう良かった。でも疲れてるでしょ?早くお風呂に入って寝たほうが良いよ。」

「優しい奥さんで俺は幸せだな? でも稀美果と一緒の時間を共有出来る方がもっと幸せなんだよ。」

と、言っていつもの様に後片付けを手伝ってくれる。


稀美果が食器を洗い、直寿が食器を拭いてくれる。


「私も幸せだよ。」


好きな人とちょっとした時間でも共有出来る時間があるって事は本当に私も幸せだと思う。


「あっそうだ夏休み最後の金曜日から2泊3日で旅行にくぞ! あの水族館に行きたいだろ?」

「えっ? 覚えててくれたの? 直寿大好き!!」

「稀美果辞めろ!」


稀美果が直寿に抱きつこうとしたら直寿は両手を前に出しそれを拒んだ。
だが稀美果は拒まれても気にせず食器洗剤で泡だらけの手で直寿に抱きついた。

そして直寿は溜息を付いて稀美果の腰に腕をまわす。








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