年の差恋愛
ふぅと、深呼吸した亜美は笑顔を作って振り返ると…

「大した事じゃありません、だから、気にしないでください」

「…」

亜美の笑顔とは対照的な茂の顔。真顔なのだが、眉をピクリと動かした…

あー、やっぱりその顔は、いつ見ても一番怖いな、と、亜美は思って、目を泳がせた。

「…嘘が下手。嘘をつくなら、もっとまともに嘘をつけ。顔に出すぎ」

「…ゔ」

「…もう一回だけ聞くぞ、何があった?」

両手で顔を掴むと、真っ直ぐに亜美を見て、茂が問いかけた。

「…それが…最近、私をずっと追いかけてくる足音があって、…怖くて…一人で帰れなくて…そしたら、安藤先輩が、こっち方面が家だからって、送ってくれて」

亜美の話を聞いて、茂は驚いた。

「…どうしてもっと早く言わなかった?」
「…迷惑かけたくなくて」

亜美の答えに、茂は溜息をついた。

「…俺が、仕事より、お前が大事だって言ったはずだが?」

「…でも、今と前では、役職が違うから」

「…亜美、俺は亜美がいるから今の自分がいると思ってる。…一人で抱え込むな。これからは、俺が必ず側にいるから」

「…茂さん…ありがとう…でも、無理はしないで下さい。今の所、大丈夫なので」

「…バカ、そのうち痛い目に遭うぞ。そんなに軽く考えるな」

コツンと亜美のおでこをデコピンした。




…2人を誰かが、歯を食いしばりながら、見ていることなど、亜美も、茂も知る由はなかった。
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