年の差恋愛
「…その腕は、本当にもうまともにうごかないのか?」

茂の問いに、静かに頷く日向。茂はより一層顔をしかめた。

「市来さん、今すぐ答えをくれとは言いません。少しだけ待ちます。…亜美ちゃんも、自分がこれからどうしたらいいのか、よく考えて」

それだけ言うと、日向はオフィスを出て行った。

「…亜美」
「…」

「…亜美」
「…あの時、一人で帰っていれば良かったですね…なんて、今更言っても遅い…」

亜美は、そのままそこにしゃがみ込み、顔を覆った。

茂は亜美の肩に、手をかけた。

「…亜美、安藤と一緒にさせる気はない」
「でも!私のせいで、安藤先輩は、あんな怪我をしたのに!」

「…あれは、俺の蒔いたタネでもある。安藤は、必ず説得する。だから、俺と別れる事を考えるな」

「亜美を助けてくれた安藤には、感謝してもしきれない。だが、お前を失ったら、俺は俺じゃなくなる。それほど、お前は俺にとってかけがえのない存在だ。それを忘れないでくれ」

「…茂さん」

「…亜美は、俺と別れても、大丈夫なの
か?」

茂の言葉に、亜美は首を振った。

「それなら、俺を信じて待てるな?」

その言葉に、亜美は頷いてみせた。
< 107 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop