年の差恋愛
…その日、亜美と茂は手を繋いで帰った。何を話すわけでもなく、ただお互いの体温を感じ、その手を握り締めていた。

…この手を絶対離さない。離したくない。

でも、もしかしたら、放さなければならなくなるかもしれない。

…日向を怪我させた美智子は、精神的に追い詰められていたため、日向は事を大きくしたくないと、被害届は出さなかった。

その代わり、もう二度も、亜美に近づかない事、心の闇を治すために、病院に通う事を条件に、美智子は咎められる事はなかった。

もう、亜美は誰に狙われる事もない。

全ては、日向のおかげだ。

そんな日向を突き放す事が、亜美には出来なかった。

それは勿論、愛情ではなく、同情だ。

そのせいで、亜美と茂には溝ができ始めていた。

結婚式まで、一ヶ月を切ったというのに、幸せ絶頂の筈なのに、全く幸せではなかった。亜美から笑顔が消えた。

そうまでしても、日向は亜美を手に入れたいのか?

亜美の隣に座っている日向は、怪我をした方の手を握りしめた。

その手は。
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