年の差恋愛
「いいえ、私もつい先程来たところですので。さぁ、立ち話もなんですから、座って下さい」

そう言って微笑む美鈴に、日向も笑顔を向け腰を下ろした。

間もなくしてワインが注がれ、乾杯すると、料理が運ばれてきた。

料理を食べながら、いつ話しを切り出そうかと日向が思いを巡らせていると、美鈴が先に話しを切り出した。

「…日向さん」
「…なんでしょう?」

フォークとナイフを置くと、美鈴は日向を真っ直ぐに見つめた。日向も、何事かと、美鈴を見返す。

「…そろそろ、正式に、結婚の話しを進めませんか?」

「…その話しでしたら」

「…日向さんが良からぬ事を考えぬうちに」
「…どういう意味ですか?」

美鈴の言葉に、怪訝な顔をした日向。美鈴は、ずっと変わらぬ笑顔で話しを続ける。

「…婚約者のいる女性を奪おうとなされていると、ちょっと小耳に挟みましたの」
「…なっ」

「…今が一番幸せの絶頂の筈なのに、日向さんはその女性を不幸になさりたいの?」

「…」

美鈴の問いに、日向は顔を歪めた。

「…私は、親の決めた相手だから、日向さんとの結婚を決めたんじゃありません」

日向は目を見開いた。…この結婚は、親が決めた愛のない結婚だと思っていた。だが、美鈴は違うと言う。驚かない方が無理な話しだ。
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