年の差恋愛
「いえ…違います。私が勝手にやってる事ですのでお気になさらず」

「…澤田」

低い声で呼ばれた亜美は、ピンの背筋を伸ばして市来部長を見る。何を言われるのか怖くて仕方ない。

「…そんなに暇なら、この伝票を経理部に、この書類は10時からの会議で使うやつ。30部コピーして、これは、資料を探してまとめて俺の所に持ってこい」

「…これ全部、私一人で?」
「…当たり前だ。これくらいできるだろ?お茶汲みしてる暇があるんだから」

市来部長の言葉に、下唇を噛む。

「突っ立ってないで、さっさと仕事しろ」
「…はい」

言われた仕事を始めた亜美。伝票を経理部に持って行き、帰って来ると30部コピーし始めた。

はぁーーー。思わず大きな溜息が出た。

「…本当、目つけられてるな亜美」
「…健斗君」

別のコピーに来た健斗が亜美に言う。亜美は困ったように笑うしかない。

「…あんなんだから、彼女の一人も出きないんだろうな、市来部長」
「仕事と、プライベートを一緒にしちゃダメだよ。あんな人に限って、彼女にはめっちゃ甘々な人かもしれないし」

ありえないような事を言う亜美。

「…もぅ、49だぜ?その年で独身という事は、彼女もいないだろうし、イコール、女に冷たい、みたいな?」

「…ほー、俺の評価は最悪だな」
「そうなんだ、よ、って…市来部長」

亜美は顔に手を当てた。健斗の顔は青ざめる。

「そんな事言う暇がったらさっさと仕事しろ!澤田、コピーは?」
「今終わりました」

「それならさっさと、第一会議室に配りに行け!」

「は、はい!」

…私は何も言ってないのにー!と、心の中で毒づいた亜美。早足で会議室に向かった。
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