年の差恋愛
…結局、部屋の前まで、市来部長と手を繋いだまま。でもそのおかけで、亜美は怖いもの知らずで済んだのだが。

「…市来部長」
「…大人しく横を歩けばいいものを」

「…だ、だって、会社の人に見られたら、要らぬ誤解が生じるかと思ったから」

「…俺とお前が、どうやったらそんな関係に見える?」

「…」

「…27も違うんだぞ。大体お前は童顔なんだから、恋人同士というよりも、親子だろ?」

「…」

…ズバリ言われて、流石の亜美も傷ついた顔をした。…やっぱり釣り合わないと、釘を刺されてしまったのだから。

…亜美の顔を見た市来部長はしまったと思った。亜美を傷つける為に言ったんじゃない。

…自分への戒めの為に出た言葉だった。

…こうでも言わなければ、市来部長は、いらぬ想いを抱いてしまうから。

「…澤田」
「…そ、そうですよね!私と市来部長じゃ変な噂も立つわけないんです。私、子供っぽいし…女の魅力なんて、欠片もないし」

自分で言ってて、情けなくなってきた亜美は、唇を噛み締めると、瞳に溜まった涙が零れた。

なんでこんなに苦しいのか、なんでこんなに悲しいのか…相手は苦手で、嫌いな上司の筈なのに。

「…澤田」
「…あ、すみません。ありがとうございました。おやすみなさい」

市来部長の言葉を遮って一気にまくし立てた亜美は、自分の部屋に入ってしまった。

その場に取り残された市来部長は、しばらくそのドアを見つめていた。
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