年の差恋愛
叫び声はなんとか抑えたが、部屋の中にいられない亜美は、大急ぎで外に飛び出した。

「…きゃっ「わっ」」

そのせいで、勢い余って誰かにぶつかってしまった。

「す、すみません」

亜美は焦りながら頭を下げる。

「…いや…澤田」
「…へ?…ぁ、…市来部長」

「「…」」

お互い顔を見合わせ黙り込む。亜美は逃げ出したかったが、部屋の中には怖くて入れない。ここは、市来部長にさっさと部屋の中に入ってるもらうしかなさそうだ。

「…エプロンつけたままで飛び出して、何かあったのか?」

…そう言えば、前にまた、退治してくれると言っていたのを思い出したが、グッと口を噤んだ。

「…もしかして、また出たのか?」
「…」

なんて察しの良い。亜美は目を泳がせたまま、小さく頷く。

「…前に約束したからな」
「…え」

「入るぞ」
「…あ、市来部長」

亜美の返事を聞く前に、市来部長はさっさと亜美の部屋の中へ。

出た場所を聞くと、その辺を探し回り、数分後。無事に、黒々としたあいつが退治された。

「…ありがとうございました」
「…ホウ酸団子でも置いとけ。じゃあな」

さっさと帰ろうとする市来部長を、亜美は思わずスーツを掴んで止めてしまった。

当然、市来部長は怪訝な顔で、亜美を見下ろす。

「…晩ご飯食べますか?」
「…は?」

「…一度ならず二度までも助けてもらって、仕事でも、お世話になりっぱなしで、お礼をしたいと」

「…気にするな」
「…部下の厚意は受けてください」
「…」

亜美の言葉に、溜息をついた市来部長は迷った挙句、『部下の厚意』を受ける事にした。
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