年の差恋愛
その顔を見て、市来部長は困ったように微笑む。

「…ただいま」
「…おかえりなさい」

「…悪かったな。日曜なのに、出社させて」
「…え??」

市来部長の言葉に亜美は首をかしげた。お局様に頼まれたのに、何故市来部長が謝るのか?


「…本当はそんな小さな仕事、月曜で良かったんだ」

亜美は目を見開く。

「…普通に、澤田をデートに誘う勇気がなくて。外で会う口実に、坪倉に、適当に澤田に出社させるよう頼んだんだ」

「…普通に誘って欲しかったです。今、スーツですよ?…デートなら、可愛い洋服着たのに」

何て言いながら、亜美は拗ねた顔をした。市来部長は相変わらず困ったように微笑んで、亜美の頭を優しく撫でた。

「…デートしようなんて言う年でもないしな。…ゴメンな?」

素直に謝る市来部長に萌えてしまった。イケメンなのに、普段は怖い顔しかしないのに、そんな顔されたら、可愛くて許してしまう。

「…いいです。…私をデートに誘おうと思ってくれたんですよね。それだけで、私は嬉しいですから」

そう言って、くしゃっと顔をほころばせた亜美を見て、今度は市来部長が萌えてしまい、思わず、亜美にキスをした。

そっと離れた唇。市来部長は亜美のおでこに自分のおでこを軽く当てた。

「…少し気になったんだが…キスするの、俺が初めてとかじゃないよな?」


市来部長の言葉に、顔が真っ赤っかになった亜美。その顔を見ただけで、全てを悟ってしまった市来部長。

亜美は、いたたまれなくて、ぎゅっと目を閉じた。


「…ヤバい。すっげー嬉しいんだけど」
「…へ?」

「…澤田の事、大事にするから」

と、ぎゅっと亜美を抱き締めた。
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