年の差恋愛
「…ん」
「…ん?」

亜美に突然手を差し出した茂。亜美は首をかしげた。

「…手」
「…手…ぁ」

右手を出した亜美。その手を差し出した手で握った茂は、亜美に歩調を合わせてゆっくり歩く。

…繋がれた手に目線を落とした亜美は、思わず頬を緩ませた。

…繋がれた手は、指と指を絡ませるいわゆる恋人繋ぎ。初めてのそれは、ドキドキするけど、何だか落ち着いた。大きくて、暖かな茂の手。

「…どうした?」
「…ううん、何でもないです」

「…何か食べたいものは?」
「…そうですね〜…ぁ、この前、梓と、あ、梓って言うのは、同じ会社の営業部の同期の子何ですけど、その子と行ったレストラン行きませんか?たくさんメニューがあって美味しいです」

楽しそうに話す亜美を、茂は穏やかな表情で見つめ、

「…亜美に任せるよ」

と、言った。亜美は嬉しくなって、茂の手を引っ張るように、一歩前を歩き出した。

レストランに着いた2人は、取り留めのない話をしながら、食事を楽しんだ。

よく喋る亜美に、耳を傾けながら、楽しそうに相槌をうつ茂。

会社とは、真逆な茂に、亜美は疑問を投げかけてみた。

「…茂さんて、会社とは別人みたいですね」

「…会社と同じ方がいいか?」
「…い、嫌です!怖いですから。ここにずーっと、しわ寄せて、怒った表情で、口から出るのはいつも怒鳴り声出し」

亜美の言葉が可笑しくて、茂はクスクスと笑う。

「…俺だって、四六時中、あの状態は保てない。仕事以外では、いつもこんな感じだよ」

「…うん、その方が絶対いいです。真剣に仕事をしてる茂さんも素敵だけど、こっちの方が、もっと素敵です」

「…力説されても困るけど」

茂は困ったような笑みを浮かべた。
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