年の差恋愛
「…ちょっと、先約が」
「…ふーん」

「…ごめんね?心配して言ってくれてるのに」
「…別に」

お互い、それぞれ溜息をついて、仕事にとりかかった。

美鈴に仕事を教えながら、同時進行で自分の仕事も進めていく。そのせいで、定時に仕事は終わらなかった。

次々帰っていく中、亜美、美鈴、茂の3人になってしまった。

いたたまれない気持ちになりながらの作業は、困難を要した。

「…市来部長」
「…有坂さん、今日はもう、上がっていいよ。急ぎの仕事はないから、また明日で」

「…市来部長、この後の予定は?」
「「…」」

美鈴の言葉に、亜美と茂が無言になる。

「…ちょっと来なさい、有坂さん」
「え、なんですか?」

眉間にしわを寄せた茂は、美鈴を連れてオフィスを出て行く。

「…市来部長!」

亜美は思わず茂を呼び止めてしまった。

「…なんだ?」
「…戸締りは私がしますから、市来部長も上がってください…」

あー‼︎こんな事が言いたいんじゃないのに‼︎と、心の中で、自分に文句を言った。

「…とにかく、有坂さんは、こっち」
「なんなんですか⁈」

怒る美鈴を茂は連れて出て行ってしまった。

…それから1時間。亜美は、仕事を終わらせ、パソコンの電源をおとした。

…茂と、美鈴は帰って来ない。

自分で招いた事とはいえ、苦しくて涙が出た。誰もいないのをいい事に、グズグズと鼻をすすりながら、戸締りを済ませた亜美は、カバンを持った。

「…ヒャッ‼︎」

後ろから突然スーツの手が出てきたかと思えば、そのまま羽交い締めにされ、亜美は悲鳴を上げた。
< 46 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop