年の差恋愛
…とは言え、この仕事量を定時に終わらせる事はやはり無理だった。見兼ねた健斗が助け舟を出す。

「…亜美、手伝おうか?俺、自分の仕事は終わらせたし」

「…健斗君、「そんな事手伝う必要はない」

亜美の声に市来部長の声が重なった。その横暴さに、流石に腹が立った健斗は、市来部長に意見した。まだ、他の社員が沢山いるにも関わらず。

「…市来部長、いい加減にしてください!澤田は確かに仕事は早くないですけど、ミスなくコツコツ仕事してますよ。同じ部署のヤツが大変なら、助けるのは当たり前です!」

シーンと、静まり返ったオフィスの中、健斗の声が響いた。亜美は、もうやめてと、健斗に目で訴えた。

「…そんなんじゃ、いつまで経っても、澤田は一人前になれないぞ」

「…ぇ」

思いもしない市来部長の言葉に、健斗は市来部長を凝視する。

「…とにかく、澤田、与えられた仕事は、きちんとこなせ、いいな」
「…はい」

亜美もまた、豆鉄砲を食らったような顔で、返事をした。

「…亜美」

心配そうな顔で、健斗は亜美を見た。我に返った亜美は、健斗に柔らかな笑みを浮かべた。

「…大丈夫。心配してくれてありがとう。一人で出来るから、健斗君は帰って、ね?」

亜美の言葉に、溜息をついて、健斗は頷くと、帰り支度をして、オフィスを出て行った。
< 5 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop