年の差恋愛
…普段、お互い仕事ばかりで、特に茂は休日出勤も多く、2人で過ごすのはもっぱら夜だけ。

久しぶりのデートが出来ると、亜美は張り切って仕事に取り組んだ。

「…えらく張り切ってるな、亜美」
「…うん、週末はしっかりお休みしたいから」

「…お前はいつも休みじゃん?」
「…」

「…あー、あの人の為か」

健斗は、部長の席に目をやった。…今、茂は会議の為、席を外していた。

「…ぅん、…凄く忙しい人だから、少しでもお休みしてもらいたくて」
「ふーん…というより、お前の為に時間を作って欲しいんだろ?」

ズバリ言われ、亜美は思わず赤面した。健斗はクスクス笑うと、仕事にとりかかる。

「…それだけわかりやすいと、あの人も楽だろうな」

ボソッと呟いた健斗を、亜美はじと目で見ていたが、ハッと我に返り、また仕事に集中した。

…そして迎えた週末。

茂は体温計を見て、大きな溜息をついた。

「…38.5℃。…今日のデートは、中止だな」
「い、嫌です!楽しみにしてたのに」

ベッドの中、真っ赤な顔に荒い息遣いの亜美がボヤく。

「…仕事に今詰めすぎだ。そんなに張り切らなくても、総務部は何人いると思ってる?俺だって、この日の為に、大分前から仕事を終わらせてきてたのに」

「…だって…楽しみだったんだもん…」

と、本音で言えば、茂はクスッと笑って、おでこに濡れタオルを置いた。

「…来週に延ばせばいい。今日はゆっくり休め。ずっと側にいるから、な?」

茂の言葉に、渋々亜美は頷いた。茂が作ってくれたたまご粥を食べ、薬を飲むと、茂に手を握ってもらい、一眠りした。


…数時間後。そこに、茂の姿がなく、心細い亜美は、ガバッと起き上がる。


「…⁉︎」
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