年の差恋愛

「…あの」
「亜美は黙ってろ」
「ゔ」

…さっきまでの甘々な父は何処へ行ったのか？今は、完璧真面目な父になっている。

「…で？さっき、市来さんでしたっけ？貴方は亜美の上司だと言いましたが、年はいくつですか？」

「…49ですが」
「「…」」

茂の答えに、あけみも洋一も目をパチクリさせた。

「…じょ、冗談じゃない‼︎」
バン！

声と同時に、両手で机を叩いた洋一に、亜美は、体を萎縮させる。こんなに怒った洋一を見るのは初めてだったから尚更だ。

「亜美！俺より８つも年上だぞ⁈やめとけ！ただのオヤジだ！」
「ヒドイ！さっきから！茂さんはオヤジじゃないよ！」

そう言って睨み合う亜美と洋一。

「やめなさい！大人気ない」
「亜美、落ち着け。…８つという事は、ご両親はまだ、41歳だろ？怒るのも無理はない」

「…でも」
まだ反論しようとする亜美を、茂は首を振って止めた。亜美は仕方なく黙る。

「…とにかく！こんなオヤジなんて、俺は認めないからな！市来さん、帰ってください」

洋一の言葉に、茂は、今日話をしても、平行線を辿るだけだと思い、帰る事にした。


「わかりました。今日のところは、これで失礼します」

そう言って頭を下げると、玄関に向かう。亜美は見送ろうとしたが、洋一が、それを手で止めた。あけみは溜息をつき、亜美の代わりに見送る。

「…うちの主人が失礼な事ばかり言ってすみません」
「…いえ。こちらこそ、こんな時間にすみませんでした」

「…あの」
「…なんでしょうか？」

「…私も、主人と同意見です。あの子はまだ22です。貴方は、49ですよね。辛い思いを沢山するのはきっと亜美の方だから…亜美との事、よく考えてみて下さい」

あけみの言葉にはかなりの重みがあった。茂は頭を下げると、部屋を出て行った。