年の差恋愛

「…べ、別に、一緒に住んでるわけじゃないし！そうよ。たまたま偶然に隣同士だったってだけよ！」

部屋の中に入った途端、亜美は自分に言い聞かせるように呟いた。

とにかく今は、明日に備えて、夕飯いや、晩御飯を食べて、お風呂に入って、顔のお手入れをしてさっさと寝よう。

そう思い、スーツの上からエプロンをつけて、前日に下ごしらえしていた材料を炒めていく。

鼻歌を歌いながら、料理をするのが、亜美の癖だ。

「んん〜ん〜…ん？…ぎゃ、ぎゃ〜〜〜！」

ふと、目線を落とした亜美の目に、黒々とした大きなゴキブリが。

虫嫌いの亜美は、近所に響き渡るほどの叫び声を上げた。…もう、午後9時を過ぎていると言うのに。

もう、今日は厄日だ。亜美はゴキブリから逃げるようにキッチンから離れようとした、その時だった。

玄関のドアが勢いよく開いた。鍵を閉め忘れてたようだ。

「おい！澤田、どうした⁈」

その声は、他の誰でもない、市来部長の声だ。嫌いだけど、今はそれどころじゃない亜美は、市来部長に駆け寄ると、ギュッと抱きついた。

亜美の行動にただ事じゃないのかと、市来部長は亜美の両肩を掴んだ。

「おい、どうした？何があった？」
「く、黒々としたあいつが」

「は？」
「もぅ！ゴキブリが出たんですよ！引っ越してきたばかりなのに！怖くて眠れません！」

「…」