年の差恋愛
…流石は社長と言うべきか。茂も押し黙った。

「…専務、君の今までの悪業は目に余るものがあった。だが、仕事の為にしてきたこともある。だから、黙って見ていたが、今回だけは、許さん」

「…」

「今後の事は、追って知らせる。それから市来茂。君の辞表届は何が何でも受理しない。この会社は辞めさせないぞ。…そこの、カワイイ部下も、君がこの会社にいる事を熱望しているんだから」

そう言うと、社長は亜美を見て、優しく微笑む。亜美は頬を染め、肩をすくめた。

社長が出て行くと、茂と亜美も、専務室を出て、エレベーターに向かった。

亜美は何も言えず、茂の後ろに立っていた。茂もまた、何も言わず、来たエレベーターに乗り込むと、ボタンを押す。

着いたところは…

「…市来部長」

着いた階に、亜美は動揺する。だが、茂はそんな亜美の手首を掴むと、そのままエレベーターを降りて引っ張る。

ここは屋上。邪魔者はいない。

「…澤田、お前、言ってる事とやってる事が、矛盾してるの分かってるのか?」

「…矛盾なんて、してません」

仕事の為に、別れた。それなのに、その仕事を辞めると言う茂をなんとか止めたかった。

「…俺の事が嫌いになったんだから、放っておけばいい」
「私は!私は…」

まだ茂が好きだ。…大好きで、大好きで、たまらない。でも、言えるわけがない。自分から、別れを告げたと言うのに。

いたたまれなくなった亜美は、その場から逃げようと、茂に背を向けた。

「…すみませんでした。もう何も言いませ…」

ポロポロと涙を流しながら、そう言うと行こうとした…が。

茂に後ろから抱き締められた。
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