年の差恋愛
「…好きだ」
「…」

「…亜美が、俺を嫌いになっても、離れると言っても、好きだ」

「…市来部長なんて、嫌い…嫌いです」

好きの裏返し。

嘘をつけばつくほど、涙が流れる。

その涙が、茂のスーツを濡らす。

茂は、亜美を自分の方に向かせ、両手で顔を包むと、その顔を持ち上げた。

「…嫌いなら、泣く必要はないだろ?」
「これは…」

「…好きで、好きで、どうしようもないって顔してるぞ」

「じ、自意識過剰、です」

「…じゃあ、俺の事が嫌いだって、目を見て言え。そしたら、亜美を解放してやる」

「…」

「…ほら、早く」

「…部長は、意地悪です」

目を泳がせ呟く亜美を見て、茂はクスリと笑う。

「…そんな事、会った時から知ってる事だろ?」

「…ゔ」

「…俺の事が好きだろ?」

もう一度そう問いかけると、亜美は目線を茂に向けると、小さく頷く。

「…俺も好きだ。仕事より、亜美の方がずっと大事だ」
「…ダメ、ダメです。仕事の事があるから、離れた方がいいと思ったのに」


…茂は思った。亜美は、事情を知っている口ぶりだ。…なぜ?
< 94 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop