年の差恋愛
「…ゴメンな…御曹司だって事は、みんなに黙ってたんだ。色眼鏡で見られるのが嫌だったから」

「…いや、そんな事は気にしてません。ただちょっと驚いちゃって。でも、また先輩と、すみません。安藤部長と一緒に仕事出来るなんて嬉しいです。宜しくお願いしますね」

「こちらこそ、宜しく」

それからの総務部は、部長が変わったという事もあり、仕事内容が若干代わり、オフィス内は、何だか慌ただしかった。

日向は仕事がよく出来る。流石は、行く行くこの会社を継ぐだけの人間だと、皆が感心していた。

茂も、慣れない統括部長としての仕事を早く覚えようと躍起になっていた。

公私ともに、充実した毎日。

そんな忙しい毎日の合間をぬって、結婚に向けての準備も着々と進んでいく。

亜美も茂も、とても幸せを感じていた。

…そんなある日、今日は少し早く仕事を終えた亜美は、一人でマンションに帰っていた。すると、後ろで、何やら靴の音が重なって聞こえてきた。

気になった亜美は振り返る…が、誰もいない。気のせいか。そう思い、また歩き出すと、間もなくして、また、亜美の足音と重なって、違う足音が聞こえてくる。

怖くなってきて、また振り返るが、やっぱり誰もいない。

疲れていて、変な幻聴が聞こえるだけだと自分に言い聞かせていた亜美だったが、そんな事は、一度では終わらなかった。

怖くてたまらなくなった亜美は、茂に相談しようと思ったが、仕事で忙しい茂に心配させたくないと思うと、言えなった。

「…亜美ちゃん、まだ帰らないの?」

怖くてなかなか帰れない亜美は、オフィスから出られず、それを不思議に思った日向が、亜美に声をかけた。
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