年の差恋愛
「…ぁ、もう終わるので、そろそろ帰ろうかなと思ってたところです」

…仕事なんて、とうに終わっていた。でも、そんな嘘で繕うと、亜美はデスクの上を適当に片付けをして、カバンを持つと立ち上がる。

「…お先に失礼します」
「…なぁ、何かあったんじゃないの?」

日向の言葉に、一瞬動揺するも、なんとか笑顔で返した。

「何かって、なんですか?何もありませんよ。早く帰らなきゃなんで、失礼します」

「…待て!…亜美ちゃんは、大学の頃とちっとも変わってないな。すぐ顔に出るとこ」

「…」

…大学の頃にも、日向に同じ事を言われた気がする。亜美は何も言えなくなって口籠る。

「…家どの辺?」

「…⚫︎⚫︎です」
「そうなの?俺も同じ」

「エッ⁈そうなんですか?」
「うん、⚫︎⚫︎の✖︎✖︎ってとこ」

「…凄い近所ですね」

驚きつつそう言うと、日向はニコリと笑って。

「じゃあ、一緒に帰ろう。俺ももう終わるから、少しだけ待ってて」
「…でも」

「いいからいいから」

日向の申し出に、ホッとしつつ、終わるのを待った。

一緒に帰る人気の少ない道。今夜は、亜美の後ろから、足音は一切聞こえてこなかった。

…日向が側にいてくれたからだろうか?

「…安藤部長」
「前みたいに日向先輩とかでいいよ。こんな時まで、その呼び方されると、疲れるから」

「えっと、じゃあ…日向先輩。困ってる事があるんです」
「ん?」

日向が足を止めた。

「…最近いつも、誰かが私の後を追いかけてくるんです…最初は気のせいかと思ったんですけど、毎日のように足音がついてきて」

「それって、ヤバいんじゃないのか?」

日向の言葉に、コクリと頷いた。
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