私を見つけて
「急に声かけんなよー。幽霊かと思ってちびりそうになっただろ」

男の子は大きな口を開けてあははと笑う。
いかにもさわやかという感じの笑顔だ。
毛先をつんつんと立たせた、ちょっと茶色の短めの髪に日焼けした顔。
およそ図書館なんて似合わないタイプ。
学ランの下に着ている杢グレーのパーカーも、だらっとしたズボンも、履きつぶした感じの黒のコンバースも、床に置かれた大きなリュックサックも、彼が図書館で熱心に勉強するタイプに見えるものはなにひとつ見当たらない。

幽霊、という言葉にどきっとした。
彼には私が人間に見えているということなのだろうか。

霊感の強い人の中には、死んでいる人が生きている人と同じように見えることがあるって聞いたことがある。
もしかしたら、この人もそうなんだろうか。

「座れば?」

男の子が椅子をひいてくれて、座面をぽんぽんと手のひらで軽くたたく。
そのしぐさに誘われるように、私は男の子の隣に腰を下ろした。

「なぁ。この問題、わかる?」

その人は教科書を私のほうにずらして片肘で頬杖をつくと、横目で私を見た。

「わかるよ」

「まじか。じゃあ教えてよ」

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