私を見つけて
「なぁ、その制服。見たことないけどどこの?」

アキが私の制服をまじまじと見ながら不思議そうな顔をする。

かなり離れた県の高校だから、見たことがなくて当たり前なのだけど。

「秘密」

私はアキから目をそらして、教科書を覗き込みながら答えた。

「なんだよ、それ。じゃあ何年生?」

「それも秘密」

アキはおかしそうに笑う。

「秘密主義なんだ。まあ、いいけど。変なやつ」

「本当、失礼だよね。アキって」

勉強を教えてもらう立場のくせにどうしてそんなにえらそうなんだろう。

「俺は県内の工業高校」

「あ、そ」

「興味なさそうだな」

「ないですね」

アキがどこの高校に通っているどんな生徒なのか、私には全く興味がない。
アキにも私に興味など持って欲しくない。
ただ、私の話し相手になってくれればそれでいい。

どうせ、いつまでこうしていられるかわからないのだから。
もしかしたら、明日にでも私は消えるかもしれないのだから。

「別に受験とか受けるつもりないから。とりあえず高校は卒業したいってだけ」

アキは聞いてもいないのに、私にかまわず隣で話し続ける。

「だから、追試で赤点さえ取らなきゃそれでいいんだけど」

「ちょっと黙ってくれる?」

教科書を見ながら、どうやって教えればいいか真剣に悩んでいた私は眉をひそめる。

「うるさいんだけど」

「ひっで」

言葉とは裏腹にアキはとても機嫌がよさそうだ。

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