私を見つけて
雪の降る町
目を開けたら、昨日と同じ図書館に来ていた。
うまく来られた。
相変わらずどうして来れたかはわからないけど、とりあえずよかった。
私は本棚の間をゆっくり歩いて、自習スペースに向かう。
そこには、もう椅子に座って教科書をひらいているアキの後姿があった。
相変わらず、学ランの下にはパーカー。
左手でつんつんした毛先をつまみながら、右手でノートになにか書き込んでいる。
ちゃんと勉強してるなんてえらいじゃん。
そう思って、後ろからそっとのぞくと、アキはイヤホンで音楽を聴いていた。
ノートには下手なキャラクターのイラストがいたずら書きされていた。
「……おわっ!」
私に気がついたアキが体をのけぞらせて大声を出した。
「お前、なんでいっつもそんな急に現れるんだよ!」
「声が大きいって」
「やべ」
アキはまじめな顔になって、イヤホンを耳からはずしながらあたりをうかがう。
「ただでさえ、ここ薄暗くて怖いんだからな」
図書館司書の人が注意しに来ないことを確認すると、アキは小さな声で文句を言った。
「怖いってなにが?」
「出そう。幽霊が」
幽霊なら目の前にいるけどね。
そう言ったら、この人びっくりするだろうなぁ。
想像したら、ちょっとおもしろかった。
でも、そんなことを言ったら、貴重な話し相手を失ってしまうから、私は笑いを押し殺して「出るわけないでしょ」と返す。
「信じてるの。おばけとか」
「ばっか。信じてねぇし」
アキは思いっきりわかりやすい嘘をついて、「座れば?」と言う。
「椅子、ひいてよ」
私は幽霊だからものは動かせない。
触ろうとしても、まるで透明な水に触れるように物体を通り越してしまう。
「はぁ? なんだそれ。お嬢様かよ」
「いいから。さっさとして」
「はいはい、さくら様」
アキがあきれたようにひいてくれた椅子に腰掛けて、私はほっと息を吐く。
「さ、昨日の続きしよ。昨日、出した問題、解いてきた?」
「ほいほい」
アキが差し出したノートを見ると、たくさんの数式があちこちに書かれていて、その中には”わからん”とか”やばい”とか独り言のような文字も書かれていた。
相当悩んだのだろうと思わせる落書きだらけのノートで散々悩んで解いことは分かったけど、残念なことに少し間違えていた。
うまく来られた。
相変わらずどうして来れたかはわからないけど、とりあえずよかった。
私は本棚の間をゆっくり歩いて、自習スペースに向かう。
そこには、もう椅子に座って教科書をひらいているアキの後姿があった。
相変わらず、学ランの下にはパーカー。
左手でつんつんした毛先をつまみながら、右手でノートになにか書き込んでいる。
ちゃんと勉強してるなんてえらいじゃん。
そう思って、後ろからそっとのぞくと、アキはイヤホンで音楽を聴いていた。
ノートには下手なキャラクターのイラストがいたずら書きされていた。
「……おわっ!」
私に気がついたアキが体をのけぞらせて大声を出した。
「お前、なんでいっつもそんな急に現れるんだよ!」
「声が大きいって」
「やべ」
アキはまじめな顔になって、イヤホンを耳からはずしながらあたりをうかがう。
「ただでさえ、ここ薄暗くて怖いんだからな」
図書館司書の人が注意しに来ないことを確認すると、アキは小さな声で文句を言った。
「怖いってなにが?」
「出そう。幽霊が」
幽霊なら目の前にいるけどね。
そう言ったら、この人びっくりするだろうなぁ。
想像したら、ちょっとおもしろかった。
でも、そんなことを言ったら、貴重な話し相手を失ってしまうから、私は笑いを押し殺して「出るわけないでしょ」と返す。
「信じてるの。おばけとか」
「ばっか。信じてねぇし」
アキは思いっきりわかりやすい嘘をついて、「座れば?」と言う。
「椅子、ひいてよ」
私は幽霊だからものは動かせない。
触ろうとしても、まるで透明な水に触れるように物体を通り越してしまう。
「はぁ? なんだそれ。お嬢様かよ」
「いいから。さっさとして」
「はいはい、さくら様」
アキがあきれたようにひいてくれた椅子に腰掛けて、私はほっと息を吐く。
「さ、昨日の続きしよ。昨日、出した問題、解いてきた?」
「ほいほい」
アキが差し出したノートを見ると、たくさんの数式があちこちに書かれていて、その中には”わからん”とか”やばい”とか独り言のような文字も書かれていた。
相当悩んだのだろうと思わせる落書きだらけのノートで散々悩んで解いことは分かったけど、残念なことに少し間違えていた。