私を見つけて
「なぁ、合ってる?」

不安そうにアキが私の顔色をうかがう。

「惜しいな。ここでxを代入したらダメなんだって。こっちでやらないと。でも、すっごく惜しい」

私がその部分を指差しながら言うと、アキはものすごく悔しそうな顔になった。

「んー。でも、なんか自分でもなんか違うかもって思ってたところなんだよな、そこ」

「違うかもって思ってたなら次は大丈夫だよ」

「だよな! うん、俺もそう思う」

アキは消しゴムで間違えた部分をごしごしと乱暴に消すと、もう一度解き始めた。

たまにシャーペンが止まり、「んー」といいながら、左手の親指と人差し指で髪をつまむ。
アキの癖なのかもしれない。

十分くらい、アキは問題とにらめっこしていた。

「あ、雪……」

考え込むアキを見ているのも飽きてふと顔を上げると、窓の外には雪が降っていて、もうすでに積もり始めている。
私の住む町には雪はめったに降らないのに。
あの事故をした日以来に見る雪だ。

「あー、またかよ」

つられて顔をあげたアキは顔をしかめた。

「また?」

「朝も降ってただろ? また積もんのかな」

「そうだね。そういえば降ってたね」

私は適当に話をあわせた。そうか、この街では毎日のように雪が降っているらしい。
アキがいやそうにしているのを見ると、毎年かなりの雪が降るのだろう。
雪が降らない地域に住んでいる私からすると、なんだか少しテンションが上がってしまうのだけど。

「できた」

子どもみたいだけど、雪だるま作りたいな。
そう思いながら、窓の外を眺めていると、アキが私にノートを差し出した。








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