私を見つけて
「すごい! 正解」

何度も書きなおされてぐちゃぐちゃになったノートを見た私が、親指と人差し指で丸を作ると、アキはにかっと笑った。

「あー、俺がんばったー」

アキは両手の指を組むと、そのまま上に伸ばして「うーん」と満足そうに言った。

「なに、満足しちゃってんの? まだ一問だからね」

「冷たいなぁ、さくらは。褒めてくんないの?」

腕を伸ばしたままで体をねじり、アキは不満げな顔で私を見る。
褒めてくんないの、だって。そんな顔したって、全然かわいくないし。
そもそも、教えてあげたのは私だ。
褒めて欲しいのはこっちのほうだ。

「さくら、鼻の鼻がぴくぴくしてる」

ぶはっとアキの体から力が抜けて、肩を小刻みに震わせながら、アキはくくくと腕で顔を隠しながら笑う。

「笑わすなよ。追い出されるじゃん」

「本当! むかつく人」

ぴくぴくなんかさせてない!たぶん。もしかしたらしてたのかもしれないけど。
それでも、女の子の顔を見て大笑いするなんて、信じられない。
思わず立ち上がると、アキはまだにやにやしながら「すいません」と軽く謝った。

「すいませんってなによ」

「まあまあ、落ち着いて座ってよ」

「なにがよ。ちゃんと謝ってよ」

「んー。ごめん」

軽い、軽すぎる。
もし、幽霊じゃなかったら、絶対に許さない。
だけど、仕方ない。
他に話せる人っていないんだし。
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