私を見つけて
「さくらっておもしろいな」

しぶしぶ座りなおした私を、笑いがおさまったアキは頬杖をついて見ている。

「おもしろい? 私が? もしかしてばかにしてる?」

「してないよ」

「してるでしょ」

「してないてば」

「してる」

「してません」

アキがまじめな顔で否定すればするほど、私はおかしくなってきてしまった。
この会話の中身のなさと、くだらなさ。
それと、アキのまじめな顔。
なんだかおかしい。よくわからないけど、おかしい。

「なに笑ってるんだよー」

とうとう私は声を出して笑ってしまった。
久しぶりに笑った。
ああ、そうだ。
笑うって楽しいな。

「なんか、アキの、まじめな顔、おかしい」

笑いながら、途切れ途切れに言うとアキは「はー?」というと思いっきり眉を上げた。

「さくらだって失礼じゃん。まじめな顔がおかしいってなんだよ」

「ごめん、ちょっと……黙ってて」

つぼにはまるとはこういうことをいうんだ。
笑いが止まらない。
だけど、笑うって素敵だ。
笑えたことが、単純に嬉しい。

「あー、ごめんごめん。勉強しよっか」

散々笑ったあとアキを見てそう言うと、アキはふくれっつらをしながらも「ほいほい」と素直に教科書を開いた。

「じゃあ今日はこれね」

私とアキは二人で教科書を覗き込む。
窓の外にはしんしんと白い雪が降り積もっていた。

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