私を見つけて
アキはふぅん、とだけこたえた。
つまんない夢。
夢なんて呼べないくらい、つまんない未来。
もう先が見えてしまっている。
そこそこのしあわせ。

『閉館の時間になりました』

アナウンスが流れたのをいいことに、私は立ち上がる。

「明日はどうする?」

マラソン大会があったら、疲れて勉強どころじゃないかもな、と思いながらたずねると、アキは意外にも「くるよ」とこたえた。

「俺は来るけど、さくらが無理だったらひとりで勉強してるから」

「今日はしてなかったくせに」

音楽聞きながら、落書きしてたのは誰だ。

「ちゃんとするって」

苦笑するアキに、宿題として一問出してから、私は「じゃあね」と出口に向かう。

「来れたら来るね」

来れたらね。
角を曲がったところで、ふいに意識は途絶えた。


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