私を見つけて
ふっと目を閉じて、次に目を開けるとそこはあの図書館だった。

瞬間移動も上手になってきたらしい。

なんとなくだけど、気持ちが動くと精神も動くみたいだ。

いつもの場所に、アキの姿はなかった。
ところどころにひびのはいった壁の掛け時計を見上げると四時過ぎだ。

しばらく図書館内をぶらぶらすることにした。
いつもの席で新聞を読むおじさんも、めがねをかけた背の低い司書さんも、誰も私に気がつかない。

家族も先生も友だちもこの人たちも、誰にも気づいてもらえないことに、もう慣れてもいいはずなのに、やっぱり心が痛くなる。

それほど広くない図書館内を、一周して戻ってみると、そこにアキの後姿があった。

「アキ」

呼ぶと、アキが当たり前のように振り返る。

「なに? めちゃくちゃうれしそうじゃん」

そう言われて面食らった。
そうか、私は今そんなに嬉しそうな顔をしていたんだ。



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