私を見つけて
「ばれる……っていうか。その、ね?」
私はあわてて付け加える。
「ほら、個人情報じゃない? そういうの、大切に取り扱わなくちゃいけないっていうか、さ」
アキはじっと黙り込んだまま、数メートル先の地面から目をそらさない。
「別にアキがどうこうっていうんじゃない、んだけど」
言えば言うほど、私の言葉は白々しくなってしまう。
黙り込むアキの姿を横目で見ながらため息をついた。
「おーい、アキー?」
遠くから、それほど大きくない、だけど確かにアキを探す声が聞こえて、アキは顔を上げた。
「ともだち?」
アキがうん、とうなずいて、声のしたほうへ顔を向けると、私はその友だちがやってくる前に棚の向こうに身を潜めた。
アキ以外の人から見えない以上、その友だちに会うわけにはいかない。
「お前、携帯忘れてたぞ」
自習スペースにやってきたアキの友だちと思わしき人が、携帯電話を差し出すと、アキは「サンキュ」と短く答えてそれを受け取る。
「あれ?」
私がいないことに気がついたアキは、きょろきょろと周りを見回した。
「なに?」
「いや、さっきまでいたんだけど」
「誰が?」
「さくらって子」
どこ行ったんだろ、と不思議そうに言いながら、アキはなおもきょろきょろと私を探した。
「てか、お前、なにしてんの? こんなとこで」
「え? あー、勉強」
「マジで?」
友だちはくすくすと笑う。
「お前、やべーもんな。数Ⅱ」
「さくらって子に教えてもらってたんだけど」
「俺にも紹介しろよー」
ともだちがふざけた調子でそういい、アキはあきれたように笑った。
「うるさいよ、お前」
「てか、いないじゃん。帰っちゃたんじゃないの?」
「いや、でもさっきまでいたんだって」
「幽霊なんじゃない、その子」
私は思わず後ずさる。
一歩、また一歩。
ばれたら。
もしアキに私の正体がばれてしまったら。
貴重な話し相手。
そう思った瞬間、ふっと意識が途絶えた。
私はあわてて付け加える。
「ほら、個人情報じゃない? そういうの、大切に取り扱わなくちゃいけないっていうか、さ」
アキはじっと黙り込んだまま、数メートル先の地面から目をそらさない。
「別にアキがどうこうっていうんじゃない、んだけど」
言えば言うほど、私の言葉は白々しくなってしまう。
黙り込むアキの姿を横目で見ながらため息をついた。
「おーい、アキー?」
遠くから、それほど大きくない、だけど確かにアキを探す声が聞こえて、アキは顔を上げた。
「ともだち?」
アキがうん、とうなずいて、声のしたほうへ顔を向けると、私はその友だちがやってくる前に棚の向こうに身を潜めた。
アキ以外の人から見えない以上、その友だちに会うわけにはいかない。
「お前、携帯忘れてたぞ」
自習スペースにやってきたアキの友だちと思わしき人が、携帯電話を差し出すと、アキは「サンキュ」と短く答えてそれを受け取る。
「あれ?」
私がいないことに気がついたアキは、きょろきょろと周りを見回した。
「なに?」
「いや、さっきまでいたんだけど」
「誰が?」
「さくらって子」
どこ行ったんだろ、と不思議そうに言いながら、アキはなおもきょろきょろと私を探した。
「てか、お前、なにしてんの? こんなとこで」
「え? あー、勉強」
「マジで?」
友だちはくすくすと笑う。
「お前、やべーもんな。数Ⅱ」
「さくらって子に教えてもらってたんだけど」
「俺にも紹介しろよー」
ともだちがふざけた調子でそういい、アキはあきれたように笑った。
「うるさいよ、お前」
「てか、いないじゃん。帰っちゃたんじゃないの?」
「いや、でもさっきまでいたんだって」
「幽霊なんじゃない、その子」
私は思わず後ずさる。
一歩、また一歩。
ばれたら。
もしアキに私の正体がばれてしまったら。
貴重な話し相手。
そう思った瞬間、ふっと意識が途絶えた。