私を見つけて
ふわっと目の前が白くなったと思ったら、図書館の外へ出ていた。
ちょうどさっきまで見ていた景色の中に私はいた。
踏みしめた時に感じる雪の感触も、頬に落ちて溶けるはずの冷たさの感覚もなかったけれど、一面真っ白な雪景色は思いのほかきれいで、すこしだけ気持ちが軽くなる。
そうだ、仕方ないんだ。
もともと、話せる人がいたことがラッキーだったのだ。
私、幽霊なんだし。
誰にも気づかれないのも、誰とも話せないのも当たり前なのだ。
あのままアキと話していたら、いつかは幽霊だってばれてしまっていたかもしれない。
いくつもの嘘をついてありそうな話をしたって、不自然な点は数え切れないほどあるんだ。
ぼろが出て、怖がりなアキをびっくりさせてしまう前に。
こうなってよかったのだ。
空から降る雪を見上げて私は息を吐く。
本当なら、白く吐き出されるはずの息だけど、そこには何もなくて。
それでもあきらめきれなくて、私は何度も同じことを繰り返した。
白い息を見れば、寒いなと感じることもできるのに。
寒さも感じない私にとっては、そういうものを見て感じることしかできないのに。
背中のほうから立て付けの悪い窓ガラスを空ける鈍い音がし、続いて「さくら!」とアキの声が聞こえた。
振り向いた私の目に、窓を空けて手を振るアキの姿が飛び込んでくる。
アキが白い息を吐く。
「さくら! なにしてんの? そんなとこで」
いつも通りの笑顔で、あきれたように笑う。
「風邪ひくぞ」
はいはい、と面倒くさそうな声を私は出した。
本当は泣きたいほど嬉しかったけれど。
幽霊だから、涙なんて出ない。
ちょうどさっきまで見ていた景色の中に私はいた。
踏みしめた時に感じる雪の感触も、頬に落ちて溶けるはずの冷たさの感覚もなかったけれど、一面真っ白な雪景色は思いのほかきれいで、すこしだけ気持ちが軽くなる。
そうだ、仕方ないんだ。
もともと、話せる人がいたことがラッキーだったのだ。
私、幽霊なんだし。
誰にも気づかれないのも、誰とも話せないのも当たり前なのだ。
あのままアキと話していたら、いつかは幽霊だってばれてしまっていたかもしれない。
いくつもの嘘をついてありそうな話をしたって、不自然な点は数え切れないほどあるんだ。
ぼろが出て、怖がりなアキをびっくりさせてしまう前に。
こうなってよかったのだ。
空から降る雪を見上げて私は息を吐く。
本当なら、白く吐き出されるはずの息だけど、そこには何もなくて。
それでもあきらめきれなくて、私は何度も同じことを繰り返した。
白い息を見れば、寒いなと感じることもできるのに。
寒さも感じない私にとっては、そういうものを見て感じることしかできないのに。
背中のほうから立て付けの悪い窓ガラスを空ける鈍い音がし、続いて「さくら!」とアキの声が聞こえた。
振り向いた私の目に、窓を空けて手を振るアキの姿が飛び込んでくる。
アキが白い息を吐く。
「さくら! なにしてんの? そんなとこで」
いつも通りの笑顔で、あきれたように笑う。
「風邪ひくぞ」
はいはい、と面倒くさそうな声を私は出した。
本当は泣きたいほど嬉しかったけれど。
幽霊だから、涙なんて出ない。