私を見つけて
「追試、合格したらさ」

ようやく笑いがおさまったのか、アキが顔をあげて私を見た。

「なんかおごってやるよ」

「え?」

「マックだけどな」

早口でアキは言ってはははとわざとらしく笑う。
照れているのかも知れない。

「いいよ、そんなの。たいしたことしてないし」

なるべく丁寧に、私は断った。
いけるわけないもの。
できない約束なんてしたくない。

「いやいや、こうやって毎日勉強教えてもらってるんだし。それくらいさせてよ」

「大丈夫だって」

「でも……」

「ほんとに……いいから」

そう言って私はうつむいた。
なんていったらいいのかわからない。

行きたくないわけじゃない。
だけど、どう伝えれば良いのかわからない。

これ以上言うと、またアキを傷つけてしまう。

「……そっか、わかった」

アキは左手で髪をいじりながら、軽い声を出す。

「モス派か」

「っば、ばっかじゃない!?」

顔を上げてアキを見ると、アキはおかしそうにははっと笑った。



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