冬の魔女と日だまりの姫
戻ってきた魔女の手には美味しそうな料理と果物がありました。
「食べて」
「ありがとう」
そう言って、一口食べて驚きました。
「あったかい……?」
この冷たい世界で、何もない空間で、温かい食べ物があったことに思わず声をあげてしまいました。
「なにか、変?」
そんなお姫さまの様子に魔女は首をかしげています。
「いや、温かいものがあるとは思わなかったから」
そして、次の魔女の言葉にお姫さまは固まってしまいました。
「だって、お姫さまは、ここの温度が苦手みたいだから。わたしも、あの暑さが辛かったから。違う温度は痛いんだって知ってるから」
こともなげに言った魔女にお姫さまは思いました。
この子は、物語の魔女じゃなくて、ただ、“人を知らない女の子”なのだ、と。
気付けば、早く帰りたいという気持ちも忘れかけていました。