冬の魔女と日だまりの姫
木々の隙間から色とりどりの屋根が見えます。
町に入ると、その騒がしさにまた驚かされました。
“吹雪よりも風よりもうるさい”
ただ、楽しそうでした。
〝楽しい〟というのがどういうものなのかさえよくわかっていませんでしたが、なんとなく、そう思いました。
そんなことを考えながらキョロキョロと見て歩いていると、魔女の耳にある会話が飛び込んできました。
「おい、城にはもう行ったか?」
「あぁ、もちろんさ。姫様ももう16なんて…、早いもんだなぁ」
どうやら、町の人たちがお姫様の噂話をしているようです。
“姫に会えるの?”
魔女は思いました。
ふつう、城の門は閉ざされて、ただの町人など入ることはできないはずです。
すると、また声が聞こえてきました。
「お姫様、すごい綺麗だったね~!」
「うん!綺麗だった!
今年のお姫様の誕生日は特別にお城が開かれるってラッキーだったよね~!」
「うん!ラッキーだった!
お城に入れることなんてこんなことがない限りは一生ないもん!」
“お城に、入れるんだ……!”
そう思った魔女はお城に向かって歩き出しました。