さくら、咲く頃あなたには
「あ、相手は、どんな奴だ」
いっちゃんに聞いてるくせに
お母さんにむかって話すお父さん。
「新堂澪(しんどう みお)さん。
取引先の栄進貿易に勤めてる25歳」
淡々と相手の自己紹介をされ
「そ、そうか」
お父さんの汗はまた額から流れ落ちる。
「お母さんは知ってたのか」
言葉に詰まったお父さんは
さっき答えてもらえなかった質問を
また聞いている。
「知ってましたよ」
いっちゃんはお母さん似だ。
かっこよく言うとクール。
実のところ、肝っ玉が座っている。
お父さんがいっちゃんに弱いのは
お母さん似だからかも知れない。