百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
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「あ、佐伯さん。おかえり!」
事務所に入ると、ソファに腰掛けていた周くんが私に気づいて声をかけた。
「見て、芝さんすごいんだよ!」
?
何が?
私は、机の上に立っている芝狸の方へと近づいた。
『おぉ、小娘!いいところに来た!
わしの新技をその瞳に焼きつけろ!』
芝狸は、くるりと一回転をして目の前の真っ白い紙に、ひらり、と一枚の葉っぱを乗せると
何やら念をかけ始めた。
険しい顔をして、ムニャムニャ何かを言ってる。
……一体、なんの大道芸?
私が少し冷ややかな視線を送っていると
次の瞬間
目の前の真っ白い紙が、一瞬にして深紅の薔薇に変わった。
!
え?!
何が起こったの?!
私がぱちぱちと瞬きをしていると、芝狸は誇らしげに手を腰に当てて言った。
『どうじゃ!まるで本物のようじゃろ?
この薔薇は本物じゃないぞ?わしの妖力で
本物と見分けがつかないほどのレベルの
コピーを作ることが出来るのじゃ!』