百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
“奴”…?
私は、ふっ、と黒スーツの男の視線の先を見た。
その瞬間、金色の桜の花びらがザァッ!と竜のように一筋の光となって、空に舞踊る。
そして私の瞳に、藍色の髪の毛の青年が映った。
「……お喋りは終わったか?
俺はやることはやったぜ。もう仕事はないんだろ?」
周くんが、声の主を見て、目を見開いた。
「………九条 遥………!
やっぱりあいつもここに来ていたのか…!」
そこには、銀の鬼火銃を手にした遥がいた。
階段の一番上に立っていて、その表情はいつもとは違う。
冷たく、感情など一切ない。
「えぇ。……今日の遥君の仕事はもう終わりですよ。
最後まで見届けてもらいますけどね。」
紺が、遥の言葉にそう答えた。
遥はそれを聞いて、ふい、と顔を背けると、夜空に舞っている金の花びらを見つめて言った。
「…早くしねぇと、妖気にあてられたザコの妖たちが暴れだすぞ。
無理やり出されたせいで、竜ノ神の機嫌は最悪だからな。」
!
竜ノ神がここに現れるの?!
すると、紺がニヤリと笑って遊馬に言った。
「さぁ、君のここでの初仕事です。
……竜ノ神を撃ち墜としなさい。」
!
私は絶句して紺を見つめた。
な………!
なにを言っているの………?!