百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私は、遊馬に向かって走り出す。
だめだ。
もう、遊馬に手を汚して欲しくない。
遊馬が、カンパニーのために鬼火銃を撃つなんて………!
その時、周くんの声が耳に届いた。
「佐伯さん!今は近づいちゃだめだ!」
私は、はっ!として足を止める。
やり切れないような、モヤモヤした気持ちが私の中で渦巻いている。
…でも、ここで引き下がったら、遊馬は本当にカンパニーの部下にされてしまうかもしれない…!
…私があの時、遊馬を引き止められなかった
今度こそ絶対、私が遊馬を止めなきゃ……!
遊馬との距離、約1メートルまで来たところで、私は遊馬に向かって口を開いた。
「遊馬!思い出してよ!
“正しいことをする”って、言ってたじゃん!早く一緒に竜ノ神を追いかけよう!」
私は、必死で遊馬に語りかけた。
彼に届くように、響くように、願いながら。
心のどこかで、遊馬はまだカンパニーに心を奪われてない。と
そう思っていた。
…しかし、私の淡い期待は
次の一瞬で崩れ去る。
チャキ………
目の前に、金色の鬼火銃の銃口が向けられた。
どくん!と胸が鈍く鳴る。
「あす………ま………?」