百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


私は、目の前の状況を理解できなかった。

狐のお面をつけた遊馬が、私に向かって鬼火銃を突きつけている。


「相楽くん!何を………?!」


周くんが、さっ、と、血の気の引いた顔で私たちを見た。


……遊馬………?

何をするつもり………?


その時

階段の上に立っている紺の瞳がカッ!と見開かれ、鈍く光り輝いているのが目に入る。


どくん!


嫌な予感が頭をよぎる。


まさか………

遊馬は操られているの……?


「じょ…冗談だよね、遊馬。

本気で私を撃つつもりなの………?」


私は、少し震える声で、遊馬に尋ねる。

しかし、遊馬は何も言わずにただ、鬼火銃を握って私を見ている。


…遊馬は、今どんな顔をしているの?


お面のせいで、見えないよ。

早く元に戻ってよ。

私たち、やっと仲間らしくなれてきたって思ってたのに。


こんな簡単に離れ離れになる運命だったの?


嫌だ………

やめてよ、遊馬…!


その時、遊馬の指が、引き金にかかった。





私は、とっさに心臓がぎゅっ!と掴まれたような感覚に陥った。

体が金縛りにあったように動かない。


「や……………!」


撃たれる…………!


と、私がそう思って目をつぶった

次の瞬間だった。


ガン!


鈍い音と共に、遊馬の持っていた鬼火銃が地面に落ちた音がした。


…っ?!


私が驚いて目を開けると、そこには空中に浮かぶ遥の姿があった。


「わり。………足がすべった。」

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