百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


私は、遊馬を追いかけることもできず、
ただ、心の中で彼の名前を呼び続ける。


………遊馬……!

どうして………?


その時、グラッ!と石階段が大きく揺れた。


「きゃぁっ!!!」


とっさに、周くんが私の体を庇うように支える。

そして、辺りを見回しながら、口を開いた。


「な……何が起こっているんだ…?!」


すると、空を見た芝狸が、目を見開いて叫んだ。


『鬼じゃ!』





私と周くんは、その声を聞いて、ばっ!と、上空を見上げる。

するとそこには、黒々とした金棒を手にした、ビル四階ぐらいの大きさの鬼が、ぎょろり、とこちらを向いていた。

芝狸が、指をさしながら尻尾をピン!と立てて言った。


『どデカイ鬼が、竜ノ神の妖気のせいで、妖界から引き寄せられおった!』


……!


う………

嘘………?!


ずしん!!


デカイ足音が響く度に、地面が揺れる。


ひいっ?!


こ……これは本当に現実…?!

いくらなんでも、デカすぎでしょう?!


竜ノ神の妖気って、あんなのを呼び寄せるぐらい強力なの?!


その時、巨大な鬼が、ずん!と足を踏み出し遠くを見つめた。

街に向かってゆっくり歩き出す。





ま……まさか

街に向かうつもり……?!


すると、それを見た芝狸が焦ったように大声で私に言った。


『急いで浄化せんと、被害が大きくなるぞ!

小娘!お主の加護の力で浄化するんじゃ!』

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