百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


周くんの叫び声が微かに私の耳に届いた。

雅さんが、目を見開いて私を見上げる。


金棒の動きがやけにスローモーションに見え

私はぎゅっ!と目をつぶった。


…っ………!


しかし次の瞬間。

想像していた痛みは一切なく、風が一瞬にしてピタリと吹き止んだ。


……!

な…何が起こったの………?!


恐る恐る目を開けると、そこには仁王立ちで私を守るように立つ、芝狸の姿があった。

尻尾をぴん、と伸ばして、鬼の金棒に向かって腕を突き出している。

芝狸の瞳はキラキラと輝き、体からは感じたことのない妖気が溢れていた。

はっ、として鬼を見上げると、金棒を私たちの頭上で止めたままピクリとも動かない。


芝狸が、鬼の動きを制しているの…?


私、助かった…?

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