百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜

そこに、周くんが素早く駆け寄る。


「……佐伯さんっ!!」


はっ!として、周くんを見上げる。

腰が抜けたようで、足に力が入らない。

私は、心苦しく思いながら周くんに向かって口を開いた。


「………ごめん…周くん……

竜ノ神、取り逃がしちゃっ…………」


私が言いかけた、その瞬間

周くんが私をぎゅっ!と抱きしめた。


!!


……え………!


「周く…「無事でよかった…………。」


私の言葉の続きを、周くんが制す。

周くんの私を抱く腕は、微かに震えていて、声も弱々しい。

周くんは私を抱きしめたまま、少し強い口調で口を開いた。


「………芝さんが間に合わなかったら、死んじゃうかもしれなかったんだよ……?

……もう…僕が守れないところに行くの禁止だから……!…絶対………!」





耳元で、安堵と怒りのような感情のこもった声が聞こえる。


………周くん………。


「ごめん……なさい………。」


私は、心の中にぞくぞくした悔やみと小さな痛みを感じて

小さくそう言った。


その時、周くんは私から、ばっ!と離れる。

そして、少し顔を赤くして動揺したように言った。


「ご………ごめん。つい、感情的になっちゃった。

……ほんとに、佐伯さんは姉さんに似てるよ危険を顧みないとことか、特に…。」


困ったように微笑む周くんに、私は何も言うことができず、ただ彼を見ていた。


すると、その時

凛としているが、少し戸惑ったような声が私に言った。


「…どうして………私を庇ったの…?」

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